新型コロナウイルスの概観

- マリヤ・クリニック・ニュース 2020.7(No.303)より -

A.厚労省のサイトから新型コロナウイルスに関して調べてみました。

  1. 「新型コロナウイルス」とは

    「新型コロナウイルス(SARS-CoV2)」はコロナウイルスのひとつです。コロナウイルスには、一般の風邪の原因となるウイルスや、「重症急性呼吸器症候群(SARS)」や 2012 年以降発生している「中東呼吸器症候群(MERS)」ウイルスが含まれます。ウイルスにはいくつか種類があり、コロナウイルスは遺伝情報として RNA をもつ RNA ウイルスの一種(一本鎖 RNA ウイルス)で、粒子の一番外側に「エンベロープ」という脂質からできた二重の膜を持っています。自分自身で増えることはできませんが、粘膜などの細胞に付着して入り込んで増えることができます

  2. コロナウイルスの感染力は

    ウイルスは粘膜に入り込むことはできますが、健康な皮膚には入り込むことができず表面に付着するだけと言われています。物の表面についたウイルスは時間がたてば壊れてしまいます。ただし、付着した物の種類によっては 24 時間~72 時間くらい感染力が持続すると言われています。手洗いは、たとえ流水だけであったとしても、ウイルスを流すことができるため有効ですし、石けんを使った手洗いはコロナウイルスの膜を壊すことができるので、更に有効です。手洗いの際は、指先、指の間、手首、手のしわ等に汚れが残りやすいといわれていますので、これらの部位は特に念入りに洗うことが重要です。また、流水と石けんでの手洗いができない時は、手指消毒用アルコールも同様に脂肪の膜を壊すことによって感染力を失わせることができます。

  3. 感染経路は

    一般的には飛沫感染、接触感染で感染します。閉鎖した空間で、近距離で多くの人と会話するなどの環境では、咳やくしゃみなどの症状がなくても感染を拡大させるリスクがあるとされています。


    飛沫感染」とは:
    感染者の飛沫(くしゃみ、咳、つばなど)と一緒にウイルスが放出され、他の方がそのウイルスを口や鼻などから吸い込んで感染することを言います。

    接触感染」とは:
    感染者がくしゃみや咳を手で押さえた後、その手で周りの物に触れるとウイルスがつきます。他の方がそれを触るとウイルスが手に付着し、その手で口や鼻を触ることにより粘膜から感染することを言います。WHO は、新型コロナウイルスは、プラスチックの表面では最大 72時間、ボール紙では最大 24 時間生存するなどとしています。

  4. 感染力の高い時期は

    新型コロナウイルスでは、症状が明らかになる前から、感染が広がるおそれがあるとの専門家の指摘や研究結果も示されており、例えば、台湾における研究では、新型コロナウイルス感染症は、発症前も含めて、発症前後の時期に最も感染力が高いとの報告がされています。したがって、人と人との距離をとること(Social distancing: 社会的距離)、外出の際のマスク着用、咳エチケット、石けんによる手洗い、アルコールによる手指消毒、換気といった一般的な感染症対策や、十分な睡眠をとる等の健康管理を心がけるとともに、地域における状況も踏まえて、予防に取り組んでください

  5. 感染者の糞便

    新型コロナウイルス感染症の疑いのある患者や新型コロナウイルス感染症の患者、濃厚接触者が使用した使用後のトイレは、急性の下痢症状などでトイレが汚れた場合には、次亜塩素酸ナトリウム(市販されている家庭用漂白剤等はこれにあたります、1,000ppm)、またはアルコール(70%)による清拭をすることを推奨します

  6. 食品を介しての感染

    現在のところ、食品(生で喫食する野菜・果実や鮮魚介類を含む。)を介して新型コロナウイルス感染症に感染したとされる事例は報告されていません。なお、食品や食事の配膳等を行う場合は、不特定多数の人と接する可能性があるため、接触感染に注意する必要があります。食器についても同様で、清潔な取扱を含め十分お気をつけ下さい
    コロナウイルスは熱(70℃以上で一定時間)及びアルコール(60%以上、市販の手指消毒用アルコールはこれにあたります)に弱いことがわかっています。製造、流通、調理、販売、配膳等の各段階で、食品取扱者の体調管理やこまめな手洗い、手指消毒用アルコール等による手指の消毒、咳エチケットなど、通常の食中毒予防のために行っている一般的な衛生管理が実施されていれば心配する必要はありません。WHO からの一般的な注意として「生あるいは加熱不十分な動物の肉・肉製品の消費を避けること、それらの取り扱い・調理の際には注意すること」とされています。

B.コロナウイルスの特徴 (国立感染症研究所のサイトより)

  1. 風邪のコロナウイルス

    ヒトに日常的に感染する 4 種類のコロナウイルス(Human Coronavirus:HCoV)は、HCoV229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1 です。風邪の 10~15%(流行期 35%)はこれら 4種のコロナウイルスを原因とします。冬季に流行のピークが見られ、殆どの子供は 6 歳までに感染を経験しています。多くの感染者は軽症ですが、高熱を引き起こすこともあります。HCoV-229E、HCoV-OC43 が最初に発見されたのは 1960 年代であり、HCoV-NL63 と HCoV-HKU1 は 2000 年代に入って新たに発見されました。

  2. 重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV

    ヒトからヒトへの伝播は市中において咳や飛沫を介して起こり、感染者の中には一人から十数人に感染を広げる「スーパースプレッダー」が見られ、医療従事者への感染も頻繁に見られました。死亡した人の多くは高齢者や、心臓病、糖尿病等の基礎疾患を前もって患っていた人でした。子どもには殆ど感染せず、感染した例では軽症の呼吸器症状を示すのみでした。

  3. 中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)

    大規模な疫学調査により、一般のサウジアラビア人の 0.15%が MERS に対する抗体を保有していることが明らかになったことから、検査の俎上に載らない何万人もの感染者が存在していることが推察されます。その大多数はウイルスに感染しても軽い呼吸器症状あるいは不顕性感染で済んでおり、高齢者や基礎疾患をもつ人に感染した場合にのみ重症化すると考えられます。重症化した症例の多くが基礎疾患(糖尿病、慢性の心、肺、腎疾患など)を前もって患っていたことがわかっています。15 歳以下の感染者は全体の 2%程度ですが、その多くは不顕性感染か軽症です。ヒトからヒトへの伝播も限定的ですが、病院内や家庭内において重症者からの飛沫を介して起こっています。年に数回程度、病院内でスーパースプレッダーを介した感染拡大が起こっていますが、市中でヒトからヒトへの持続的な感染拡大が起こったことは一度もありません。

  4. 動物コロナウイルスの感染性

    コロナウイルスは家畜や野生動物などの、我々の周りに棲息するあらゆる動物に感染し、様々な疾患を引き起こすことも知られています。多くの場合、宿主動物では軽症の呼吸器症状や下痢を引き起こすだけですが、致死的な症状を引き起こすコロナウイルスも知られています。家畜では豚流行性下痢ウイルス(PEDV)、豚伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)、鶏伝染性気管支炎ウイルス(IBV)、実験動物ではマウス肝炎ウイルス(MHV)、ペットでは猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)が致死的です。コロナウイルスの種特異性は高く、種の壁を越えて他の動物に感染することは殆どありません

  5. 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)

    飛沫感染・接触感染を主とする感染経路であり、一部の感染者及び感染者の行動や、環境要因によっては強い感染伝播が発生する場合があると考えられています。臨床的な特徴としては、1〜14 日(5日間が最も多い)の潜伏期間を経て、発熱や呼吸器症状、全身倦怠感等で発症します。感冒様症状が 1週間前後持続することが多く、この頃より胸部 X 線写真、胸部 CT などで肺炎像が明らかになることがあります。一部のものは、呼吸困難等の症状を呈し、重症化します。また、発症者の多くが軽症であると考えられていますが、特に高齢者や基礎疾患等を有する者においては重篤になる可能性があるため厳重な注意が必要です

C.新型コロナウイルスに関するその他の情報

  1. 米国カリフォルニア州のラホヤ免疫学研究所

    既存の別のコロナウイルス(ふつうの風邪)に感染した 11 人の血液サンプルを調べたところ、その半分(40-60%)から、今年の新型コロナのウイルスを防ぐ免疫作用を持つ「T細胞(免疫システムの中心的な存在)」が検出されました。ふつうの風邪の感染で形成される抗体が、新型コロナに対する免疫力を兼ね備えているらしいことがわかったのです。ふつうの風邪にかかったことがある人の多くは、新型コロナウイルスが体内に入っても感染(ウイルスを定着、増殖)させないか、感染しても限定的なかたちに制限できるようです。この既存の免疫作用が、新型コロナが蔓延しているのに感染や発症をしない人が多い世界の現状につながっています

  2. スイス・チューリッヒの大学病院

    新型コロナウイルス感染者に濃厚接触してしまった医療従事者 109 人を調べたところ、新型コロナウイルスの症状があった 92 人のうち、11 人しか抗体(IgG)が作られていませんでした。新型コロナウイルスに感染しても、ほとんどの人には抗体が作られないまま治癒します。発症しても本格的にならないと抗体が作られないことがわかったのです

  3. 免疫との関係 (市川総合病院循環器内科)

    免疫が働きにくく、完全に治癒することはできないといった、非常に悪質なタイプの可能性もあります。一度陰性となった方が再び陽性となることがあり、一部の方には持続感染という現象が起きている可能性さえ考えられます。肝炎ウイルスのように、抗体ができていても体内にウイルスが残る場合もありますし、帯状疱疹のようにほぼ一生ウイルスが体内の奥に潜み、体力が低下したときに繰り返し出てくるというようなものもあります。

  4. 新型コロナウイルスが起こす重篤な症状 (市川総合病院循環器内科)

    心筋が新型コロナウイルスに侵されると心臓が急激に動かなくなり、急速に死に至ることがあります。新型コロナウイルスが髄液に入ると重篤な意識障害、神経系の障害が起こります。多くの感染者では肺が侵され、酸素を身体に取り込む呼吸機能が損なわれますが、身体では酸素が消費し続けられるので、身体の酸素がどんどん低下し、低酸素血症と言われる状態になります。重度の低酸素血症が生じると全身に酸素が行き渡らなくなり、脳は低酸素に陥り意識が低下します。それぞれの内臓も必要な酸素が不足するため、肝臓や腎臓など多臓器が失調します。血圧や心拍数などを保つ機能さえ損なわれ、やがて血流は低下し、多臓器不全の状態となります。多臓器不全に陥ると、救命できる可能性は低くなり、高齢者など体力が低下している人ではほぼ 9 割方が亡くなります。

  5. 症状の不顕性、顕性、潜伏期間 (市川総合病院循環器内科)

    不顕性感染の患者さんが多い一方、発熱、倦怠感、咳、および味覚や嗅覚の低下などの症状を有した顕性患者さんも相当数います。症状は人によってさまざまで、微熱が数日続く人から 38℃以上の発熱が 1 週間も続く人まで、喉が痛くなる人がいたり、咳がひどい人がいたりと、おおむねいわゆる風邪の症状に近いものです。新型コロナウイルス感染症特有の症状というものはなく、風邪かなと思われて感染に気づかない患者さんを多くしている一つの原因となっています。顕性感染と不顕性感染の割合はわかっていませんが、偶発的に発見される不顕性感染が報告されていることから、全体に対する不顕性感染の割合はかなり多いことが想像されます。顕性となるのは全体の 1 割程度、9 割、あるいはそれ以上が不顕性である可能性さえあるのです。更に、潜伏期間がどのくらいかもわかっていません。


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