- マリヤ・クリニック・ニュース 2021.4(No.312)より -
新型コロナウイルスのワクチン接種は、当初の発表よりかなり遅れています。そして、変異型のウイルスの国内感染も急激に増えており、ある型のものはこれまで開発されたワクチンでは効かない、効きが悪いなどとも言われており、どうしたら良いか、戸惑う方も多いかと思います。そこで、新型コロナウイルス関連の記事が続いてきましたが、今回はそのワクチンについて説明したいと思います。なお、現在のところ、当院での接種は行う予定はありません。
新型コロナウイルス・ワクチン接種
(厚生労働省のサイトより)
- 接種費用は無料です。強制ではありません。2回接種で3週間後に2回目の接種。
※ 健康被害が出た場合には国が補償します。
- 接種対象者は接種日に16歳以上の人。接種順位は以下の通り。
- 医療従事者等
- 高齢者(令和3年度中に65歳に達する、昭和32年4月1日以前に生まれた方)
- 高齢者以外で基礎疾患を有する方や高齢者施設等で従事されている方
- それ以外の方
- 接種を受ける為の手続き
- 接種の時期より前に、市町村から「接種券」と「新型コロナワクチン接種のお知らせ」が届きます。
- ご自身が接種可能な時期が来たことをご確認ください。
- ワクチンを受けることができる医療機関や接種会場をお探しください。
- 電話やインターネットで予約をしてください。
- ワクチンを受ける際には、市町村より郵送される「接種券」と「本人確認書類(運転免許証や健康保険証など)」を必ずお持ちになってください。
- 副反応が起きた場合の予防接種健康被害救済制度
予防接種法に基づく予防接種を受けた方に健康被害が生じた場合、その健康被害が接種を受けたことによるものであると厚生労働大臣が認定したときは、市町村により給付が行われます。申請に必要となる手続き等については、予防接種を受けられた市町村にご相談ください。(厚生労働大臣の認定にあたっては、第三者により構成される疾病・障害認定審査会により、因果関係に係る審査が行われます。)
新型コロナウイルスのワクチンについて
- ワクチンの提供元
- ファイザー社(アメリカ)。承認済で接種が開始されています。
- モデルナ社(アメリカ)。3/5に承認申請、5月頃から開始予定。
- アストラゼネカ社(イギリス)。2/5に承認申請、5月頃から開始予定。
※ 接種会場ごとにワクチンの種類を決めて、打つワクチンの選択が可能になることが発表されました。
- ワクチンの効果
1回目の接種後12日で効果が出ていると報告されています。直ぐに効くわけではありません。効果の持続期間はまだよくわかっていませんが、2回するのは抗体の形成を確実にするためです。ファイザー社のものは21日間後、モデルナ社のものは28日間の間隔を空けることが推奨されています。それでは間隔を空け過ぎたらどうなのか、ということについては今のところわかっていません。効果の持続期間もわかっていません。
- ワクチン接種に関する医療機関上の問題点
- mRNAワクチンは、超低温で保冷しなければならず、ファイザー社(-80℃)・モデルナ社(-20℃)の超低温保冷庫の確保が必要です。
- 1バイアルでファイザー社は5回分、モデルナ社は10回分、アストラゼネカ社は10回分あり、その数のワクチン接種者が集まらなければ始められません。海外では、残ったワクチンの接種者を探して奔走した医師が違反として逮捕されました。
接種によって十分な抗体を造り出すためには、身体が健康でなければならず、過激な運動や飲酒は避け、栄養状態も良いように心がけなければなりません。
- ワクチンの副反応
「副作用」とはワクチンを含む医薬品や手術などの医療行為によって生じる主要な作用以外の二次作用のことであり、「副反応」とはワクチン接種に関連した事柄に限定されます。
アナフィラキシーと呼ばれる副反応が報告されています。このアレルギー反応は、蕁麻疹などの皮膚症状、腹痛や嘔吐などの消化器症状、動悸や血圧低下などの循環器症状、息苦しさなどの呼吸器症状などが急激に起こる過敏反応であり、同時に起こることもあります。この反応の監視のために、接種後15分から30分接種場所に留まって観察することが必要です。「副反応のないワクチンは存在しない。副作用のない治療薬はない。」という医療関係者もおりますが、そのような考え方こそが、ワクチン接種を敬遠したがる人が多い理由であることをわきまえてほしいものです。
- 女性に副反応が多い理由
アメリカでは20万回に1例、イギリスでは10万回に1例と報告されているアナフィラキシー症状ですが、接種が少ないのに日本では4900人に一人の割合で現れているようです。日本の37例のうち35例、海外でも7割から8割近くが女性のようです。
その可能性として、エストロゲンやプロゲステロンなどの女性ホルモンが免疫細胞の表面に結合して、ワクチンとの相互作用で強い免疫反応を引き起こしているかもしれません。逆に、男性ホルモンのテストステロンは免疫機能を抑えてしまい、ワクチンの予防効果が抑えられる可能性も挙げられています。そもそもリウマチや慢性甲状腺炎などの自己免疫疾患は、その8割が女性であり女性の免疫遺伝子の方が男性よりも強いことが理由ともされます。mRNAワクチンにはポリエチレングリコール(PEG)という物質が含まれていますが、PEGは薬や食品などの添加剤に使われており、女性が使う化粧品にも多く使われているので、体内でアレルゲンとして反応されていることもあると、昭和大学の二木芳人客員教授が指摘しています。身体が小さい女性に男性と同じ量を接種することでワクチンが効き過ぎるという指摘もあります。乳化剤としてチョコレートなどに含まれるポリソルベートもアレルギー反応に関係しています。
- ワクチン接種について医師の診断と確認を必要とする人
- 妊娠・授乳中の人
- 重度のアレルギー疾患(喘息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー等)がある人
- 自己免疫疾患(関節リウマチ等)の人
- 中等症以上の急性疾患(入院している)の人
- 新型コロナウイルス感染症にかかって90日以内の人
- ワクチン接種後に感染したら重症化するのか
WHOでは再感染例も出ているので、予防接種を推奨しています。
ワクチン接種により産生された抗体が、その後に感染した場合に、そのウイルスとの相互作用で症状を悪化させてしまう抗体依存性感染増強(ADE)ということがあります。猫コロナウイルス感染症ではADEが起こることが報告されています。デングウイルスでも、SARSやMERSへのワクチン開発でも動物実験では報告されています。
- ワクチン接種をしたら、検査は陽性になるのか
感染はしていないので、予防接種によって遺伝子検査も抗原検査も陽性になりません。予防接種で免疫獲得後には、抗体検査では陽性になります。2回の接種後に抗体検査で陰性であっても、現在のところ追加の接種はできません。
- なぜ、16歳以下はワクチン接種をしないのか
統計的に大人よりも感染する人数、重症化する割合がはるかに少ないことによります。原因としては、子どもの免疫システムが大人よりも強力なこと、鼻腔を覆う細胞に存在するACE受容体が少ないことが挙げられています。ACE受容体は、新型コロナウイルスが宿主細胞に侵入し感染する際の入口となるので、これが少ないと感染率が少なくなります。ところが、最近は幼児を含めた子どもたちの感染が増えています。変異型ではないと報告されていることが多いようですが、子どもへの接種も必要になってくると思われます。
今後の展開はどうなるのか
- 続々と発見される変異ウイルス
中国で始まり、イギリス型、南アフリカ型、ブラジル型、・・・、日本型も出ているのではと噂されています。ワクチン自体が特定のウイルスへの適用を目的としているので、対応できない変異型が現れることは予想されます。既に国や地方によっては変異型ばかりになっており、既成のものでは対応できなくなって製造済のワクチンの廃棄も今後ありえます。
- 一度感染したら、二度と感染しないのか
同じ型に対しても免疫の持続性は確認されていません。また、変異型が出ているので、それに対応したワクチン接種が必要になると思われます。新しいワクチン開発と変異型の発生は、なかなか終わらない繰り返し競争になる恐れがあります。
- 集団免疫を獲得するか
感染したり、ワクチンを接種したりで6割から7割の人が免疫を持てば、集団免疫が成立して感染が拡大しづらくなると言われています。多くの人が感染したインドで新規感染者が減ってきたのは集団免疫と報告されましたが、変異型が広まり、再び感染者が増えています。新型コロナウイルスの場合、変異が頻繁に起こるので、集団免疫を形成する暇がないと言われています。
- ワクチン接種しないと規制や罰則がおこるか
国際線の飛行機に乗る際にワクチン接種の証明が必要になるとか、入国に必要になるという情報が飛び交っています。変異型が続いて起こっているので、ワクチン接種で感染を免れるという保証もなくなりつつあり、おそらく定着しないと思われます。