感染症の歴史を振り返って

- マリヤ・クリニック・ニュース 2021.5(No.313)巻頭言より -

コロナ禍は拡大していくようですね。仕事や学校も生活も対応して困難になるばかりです。自然災害の困難も辛いですが、感染症の流行も大きな災害です。日本では、735年に天然痘の大流行で人口の3割が死に、1858年にはコレラの為に江戸だけで3万人が死んだということです。ペストは542年から200年間も流行して地中海地方の人口の4分の1が死亡して東ローマ帝国を衰退させ、14世紀にはヨーロッパで7500万人が死んで黒死病として恐れられました。1918年のスペイン風邪では世界で4000万人が死に、終息までに3年かかりました。1957年のアジア風邪で200万人、1968年の香港風邪で100万人が死んでおります。新型コロナウイルス感染症はこれまで300万人以上の死者が出ていますが、変異型も頻発しており数年は収まりそうもありません。

歴史を振り返ると、このように感染症は繰り返されておりますが、ビジネスや旅行のグローバル化で、これまでにない感染の速さ大きさを感じます。黒死病流行の際に医師がつけたカラスのくちばしのようなマスクを見たことがありますが、そこには予防の為のハーブなどが入っていました。ともかく、医師たちが奮闘していたことがわかります。

感染症の恐ろしさや警告が飛び交いますが、注目すべきは生き延びた人たちです。特効薬もなくワクチンもない状況の中で、感染しなかったのか感染しても治ったのか、ともかく免疫力が強かったのです。知識や技術が深まり、医療も進歩していますが、免疫力には敵わないのです。殺菌・除菌スプレーも大流行です。抗体も感染によって造られるのではなくワクチンによる疑似感染によって造られるようになり、さらにワクチン自体が遺伝子で造られるようになりました。未来映画で、未知の病原菌やウイルスに冒されて死滅する人類の様子を観ると、科学自体の発達が対応できないウイルスを作り出してしまう恐れも危惧します。今回のコロナ禍は、そのようなプロセスを経ての蔓延ではないかと穿った見方もできます。果たして生き残るのは、注意深い生活をしている人なのか、免疫力の強い人なのか、医療ケアを十分に受けられる人なのか。人知を尽くした対処に対して、ウイルスが巧妙に変異しているのも、映画のような恐ろしさを感じます。仕事も社会も変異してしまいました。私達は人格を持った存在として、映画のヒーローのように立ち向かわなければならないと思わされています。