今後の社会はどうなるのでしょうか?

- マリヤ・クリニック・ニュース 2020.9(No.305)より -

新型コロナウイルスによって社会や経済そして多くの人々の生活に支障をきたしていますが、さらに新しいパンデミック・ウイルスの発見が報告されています。天候異変や自然災害も増加しており、どのように対応して良いのか、途方に暮れる方も多いかと思われます。

「政府はどうなっているのだ。国は何もしてくれないじゃないか。」と訴える人もいるでしょうが、歴史的に、国というものは国の存続や繁栄は模索しても、一般国民、特に弱者には対応してきておりません。明治以来の富国強兵策では、国民に対して国家が繁栄すれば国民は幸せになると訴えて、集団としての結束を求め、個性や個人の権利・人格をないがしろにしてきました。その結果、日本は驚くべき成長を遂げて欧米との経済的社会的格差を解消してきました。しかし、その反面、「自分で考える。自分の力で生きる。自分の権利を主張する。」などという「個人」という観念が健全に形成されて来なかったという日本特有の状況が生まれてきました。これらは、日本特有のものであり、美点でもありますが、弱点でもあります。そして、国が結束しても対抗できないものに対しては、特に脆さが出てしまうのです。その点について、具体的に考えてみましょう。

A.国家の限界

マックス・ウェーバーは『職業としての政治』の中で、現代社会は合法性による支配を理想とするけれども、官僚制の中では容易に合法性が構築されて退廃した政治が行われる危険性を唱えています。塩野七生も『ローマ人の物語』で、強大なローマ帝国が滅びたのは官僚制の故であると指摘しています。しかし、国家というものが維持機能するためには、官僚組織が必要であり、行政が公正な税制に基づいて営まれ、立法府や司法が機能しなければなりません。そういう経緯と必然の中で汚職や怠慢な行政が営まれてきたのです。国家は、無駄や不正の中で、全体としては機能してきたのであり、公正かつ効率的な政治が為されてきた歴史はないというのが事実です。国に対する信頼や期待が高く、忠誠心が高いのが日本人の特徴ですが、今後は難しいでしょう。

1.国境がなくなった。

ヨーロッパではEUという国を超えた大きな経済・文化・政治圏が出来たことに驚いていたの
に、今や交通手段や通信技術の進展、そして市場経済の国際的開放により、国境を越えた(意識しなくなった)活動が簡単に行われています。グローバル企業の法人税を獲得する為に、税額を低くして企業を誘致することに力が注がれ、国の税収は安定したものではなくなりました。消費税は間違いなく高くなり、生活費は上がってきます。

難民は福祉の充実した国に集まり、それらの国々は経済的に破綻して福祉を不十分なものにしたり、難民規制を始めたりしています。イギリスは、EUに入って国境がなくなり独自な政策が持てなくなったので離脱をしました。アメリカは難民受け入れやメキシコ国境からの流入を阻止しようとしています。裕福で暮らしやすい国には、人々が流入するようになり、貧しい国からは人が出ていくという国家淘汰の時代になってきています。

2.政治形態・組織が古い。

地域社会の利益の為に活動する議員や首長では対応できない程、地域商圏の振興策を講じるのが難しくなっており、災害も大規模化しており、地域に固執すると健全かつ有効な政策がとれなくなってきています。コロナ対策でもわかるように、ネット対応ができない役所となっているのは、役人と首長、議員の旧態依然とした仕事ぶりと考え方に原因があります。

B.既存企業の限界

1.ネット社会の進展に立ち遅れている。

現在の世界的十大企業は、マイクロソフト、アップル、アマゾン、アルファベット(グーグルの持ち株会社)、フェイスブック、アリババ、テンセント、とインターネット企業が7つもあり、国際的な活動をしています。週刊ダイヤモンド(2019.5.18.)によれば、1989年の時価総額ランキングでは日本の企業が50社のうち32社もあったのに、2019年にはトヨタが42位に入っているだけです。日本の会社はネット時代に大きく立ち遅れ、これまでの商売の仕方から離れられずに存続の危機に入っており、国際企業に吸収されたり、子会社となったりしております。

2.グローバル化に対応できていない。

英語ができない、パソコン・ITができない、指示待ち人間、その他グローバル化に対応できない人々が企業社会を動かして立ち遅れさせてしまい、若い人々も諸外国に比べて閉鎖的日本社会に迎合して活力がなくなっています。日本の経済活動は、外国企業に吸収され、全体として縮小していくでしょう。

Ⅽ.社会の疲弊が顕著

1.高齢化と単身者が増え、独立や開業を目指す人々が減っている。

田舎では高齢者も働き、家族が助け合っていますが、都市部では退職してから働くところが安易なパート職しかなく、住宅も手狭になって世代間の同居が難しくなっています。生活費や部屋の賃貸も高額なので、開業には高額な資金が必要です。結局のところ、パートタイマーやアルバイトの職に就くしかなくなっています。中産階級が減ると社会は疲弊します。

2.娯楽や飲食が高額になり、人付き合いも金が掛かる。

公共サービスを利用したり、スマホなどを一人で操作したりするしかなくなり、人との交流
が少なく苦手になってきています。自分の家に食事に招くほどのスペースもゆとりもありませ
ん。忙しい子供家族や孫とも話が合わず疎遠になってしまいます。

まだ遅くない。やり直そう!

A.自分と周囲を再点検

1.助け合える家族はいるでしょうか。

“一人で気儘に生きたい。”などと考えてはいけません。伴侶も、子ども世代も、親世代も、忙
しく人に気を遣うゆとりもなかったことでしょう。しかし、災害や疫病が予想される今日、頼りになるのは家族です。愚痴も聞き、キツイ言葉も受け流して、優しい言葉と行動で仲良く過ごすことを身に着けてください。親しくなることは犠牲が必要なのです。

2.生活と資金を点検してください。

緊急の時には、何よりも現金が必要です。そして、健康で安全な、ゆとりのある生活を営むためには生活全般を十分にチェックしなければなりません。

① 自炊をしているでしょうか。
食材を自ら買いに行き、調理することは大事です。飲食店の原価は3割以下、デリバリーも同様で、冷凍食品や出来合いの食品は保存するために添加物を含んでおり健康によくありません。自炊とは電子レンジでチンすることではありません。夫婦や家族で調理するならば、良き交流になります。そして、食費は3割くらいに減るでしょう。飲み物をペットボトルで買う人も多いのですが、砂糖を含めた添加物が多く、原価は10分の1以下です。

② 動き働き、運動をしているでしょうか。
運動をしていると言いながら家事をしていない男性がいるものです。忙しいと言いながら、テレビを見続けている人が多くおります。怠惰な生活が健康と健全な生活には大きな害です。両親がまめに働かないと、子供達も怠惰になります。

③ 無駄な物を買っていないでしょうか。
テレビの宣伝に煽られて、便利だと思い込み購入してはいけません。除菌し過ぎは免疫力を弱くします。便利とは、動かないで済ませることのようですが、健康には害です。消費を煽るコマーシャルは、経済と健康を悪くします。

④ 投資に充てるのは、必要資金が満たされた時です。
投資で大儲けしようとする人は、必ず大損をして老後の資金をなくします。節約をきちんとした上で、緊急の際の資金留保をしてください。節約を心掛けていない人の生活は荒んできます。

3.健康自己管理をしてください。

① 血液検査、体組成測定、その他の検査結果を定期的に確認してください。
発病しなくても、痛みや不具合がなくても、「未だ病に至らず」未病という状態の人は多く、また症状や痛みがあっても、我慢する人がおります。重度になればなるほど、回復は困難になります。検査結果をファイルして、自分の身体の弱さ、特徴を理解しておくことが大事です。健康とは、暑さ寒さ、ストレスや疲れに耐性があるという状態です。

② 身体に害のあるものを避けてください。特に糖分。
糖分の摂り過ぎによる糖化によって細胞を劣化させることがわかってきました。精製糖や精製炭水化物は、認知症を進ませることも知られています。「甘いものは身体に毒である。」と思って節制すれば、いつまでも若さを保てます。聖書には、「脂肪を食べてはならない。」とあります。背油ラーメンを食べ続けて健康が維持できるとは考えないでください。肉を食べる時には、ビタミンの豊富な緑黄色野菜を摂ることは必須です。ペットボトルや缶コーヒー、ドリンク剤などを買わないで、自前のボトルに手製の飲み物を携帯しましょう。

③ 筋肉を付け、骨を強くしてください。
十分自己管理しなければ、決して筋肉は付かず、骨量も増えません。タンパク質を十分に摂取して、運動に必要なビタミン・ミネラルを摂取しながら、負荷を定期的に与えることは難しく、多くの人が筋肉を付けようとして却って健康を害しています。ところが、筋肉と骨の強化こそが、ストレスや気候変動、災害への最も有効な自己管理なのです。

④ 性格を良くし、人と仲良くしてください。
こだわりが強く、好き嫌いの激しい人が、危急の時に人の助けを素直に受け入れるということは難しいようです。見栄や偏見、虚栄心も避難所で暮らすには邪魔になり、孤立すると命を危うくします。気を遣い過ぎると自らを衰弱させ、頑固や固執は身体に必要な物の摂取を妨げます。

B.仲間づくりに励もう!

人にはそれぞれ個性があり、違いがあります。自分の思い通りになることを期待すると、仲良くはなれません。嫌な人とは仲良くなる必要はありませんが、周りの人全てが嫌な人ならば、あなた自身が嫌な人なのかもしれません。他人とは仲良くなれるけれども、伴侶とは敵対する夫婦もあります。責めあう親子もおります。これまでの歩みで赦せないようなことがあったのかもしれませんね。黙っていないで、正直にその時の悲しみ苦しみ辛さを打ち明けてみることも必要だと思います。また、自己中心になって、相手に要求ばかりをしていたかもしれません。自分の心を振り返ってください。

いがみ合い、責め合う人生は、なんと苦く虚しいものでしょうか。社会がどうなろうと、貧しかろうと、困難が多かろうと、愛し合う人を確保したら、どうにか過ごせるものです。そうなったら、試練の時も良い思い出になるかもしれませんね。自分の殻から出て、親しい人を確保する冒険に出てみましょうか。簡単ではないと思いますが、幸せになりますように。



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