- マリヤ・クリニック・ニュース 2022.1(No.321)より -
Ⅰ. 感染予防で注意しなければならないこと
新型コロナウイルスのオミクロン株は、重症化することが少ないとの報告がありますが、そのことで感染対策を安易なものにしてしまうと、感染によるダメージが大きいと予想される人々への被害を大きくしてしまいます。日本の感染が少ない理由は、人々が十分警戒して接点を少なくしマスクをしていることが寄与していると思われます。注意をしていきましょう。
上の図を見てください。戦争の際に防御力がしっかりしていないと味方はたちどころに負けてしまいます。医師も研究者もワクチンばかりを重視していますが、それは個人への注意喚起よりも科学的・医学的対応の方が合理的だと考えているからでしょうか。毒や有害物質を体内に取り入れないことが最も大事であって、解毒剤を摂っても毒が入ってしまえば体力は衰えるのです。
高齢者は皮膚・粘膜が弱く、免疫力も衰えてきます。だから、実際にはワクチンを接種してもあまり効かないことがあるのです。
基礎疾患を持つ人や肥満の人は、やはり免疫力が弱いので、ワクチンの効果が健康な人よりも弱いのです。
ワクチンは強制的に免疫を作り出すものですが、免疫力の弱い人は、残念ながらワクチンを接種しても、その効果は低いのです。そして、免疫力強化は、このニュースでも繰り返して述べてきましたが、薬を飲むように即効的ではないので、取り掛からない人が多いのです。肥満の人に「痩せろ!」と言ってもストレスを与えるだけで、病気の人に「治せ!」と言ってもそれはハラスメントであるのと同様です。日本人はインスリンの分泌能力が遺伝的に少ないために、少し太ると糖尿病などになり易く、高血圧、脂質異常症などにもなるのです。肥満自体が病気であることを自覚してください。
メルク社の新型コロナウイルス治療薬「モルヌピラビル」が承認されました。軽症・中等症向けで、自宅療養で使いやすい飲み薬です。対象は18歳以上で重症化リスクのある患者です。妊婦には投与できません。発症早期から5日間、1日に2回ずつ服用します。メルク社は新たな変異ウイルス「オミクロン株」にも有効である可能性が高いと説明しています。治験では、高齢などで重症化する恐れの大きい患者の入院や死亡のリスクを約30%抑えられたそうです。その他にも、新薬、新ワクチンが続々と開発されてきており、治療及び予防に用いられるようですが、感染症に対しては、第一に防御力(マスクや消毒、皮膚や粘膜の物理的化学的バリア、用心深さ)であり、第二に戦闘力(免疫細胞の働き、ワクチン、薬)、そして第三に補給力(栄養素、消化吸収力、休息・睡眠・体温保持)であることを意識してください。
A. 高齢者や病人、そして肥満者を感染させないようにする
・重症化したり、亡くなったりするのは高齢者や病人、そして基礎疾患を持つ人たち
コロナウイルスは健康な人では比較的症状が悪くならないのですが、高齢者及び基礎疾患をもつ人、更に肥満の人では重症化することがあるようです。
国が定める基礎疾患を持つ人たちは以下のようなものです。
1.65歳に達しない者であって、以下の病気や状態の方で、通院/入院している方
慢性の呼吸器の病気。・慢性の心臓病(高血圧を含む。)。・慢性の腎臓病。・慢性の肝臓病(肝硬変等)。・インスリンや飲み薬で治療中の糖尿病又は他の病気を併発している糖尿病。・血液の病気(ただし、鉄欠乏性貧血を除く。)。・免疫の機能が低下する病気(治療や緩和ケアを受けている悪性腫瘍を含む。)。・ステロイドなど免疫の機能を低下させる治療を受けている。・免疫の異常に伴う神経疾患や神経筋疾患。・神経疾患や神経筋疾患が原因で身体の機能が衰えた状態(呼吸障害等)。・染色体異常。・重症心身障害(重度の肢体不自由と重度の知的障害とが重複した状態)。・睡眠時無呼吸症候群。・重い精神疾患(精神疾患の治療のため入院している、精神障害者保健福祉手帳を所持している、又は自立支援医療(精神通院医療)で「重度かつ継続」に該当する場合)や知的障害(療育手帳を所持している場合)。
2.基準(BMI30以上)を満たす肥満の方
BMI30以上の目安:身長170cmで体重約87kg以上、身長160cm体重約77kg以上。計算方法:[体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]
Ⅱ. なぜ日本では感染が減っているのか?
マスコミでは他の国への配慮もあり、日本人と他国との違いを取り上げづらく、マスクの習慣やワクチンの効用、そして遺伝的要因などを感染減の要因として指摘していますが、上に挙げた防御力と戦闘力(免疫力)の強さが原因だと思われます。他の国では、ワクチンだけに強調点を置いてワクチンを受けたら何をしても良いような国もありますが、感染症というのはそんなに簡単なものではなく、防御力を保っていなければ容易に侵入されて痛い目に遭います。遺伝素因や免疫力の強さも、それに安心してはいけないものです。日本人の特徴は、他の人への配慮の深さですが、こういう感染症に対しては大きな力を持つことを確認しながら注意していきましょう。
A. 文化的要因
・靴や上着を脱ぐ習慣
外国へ行くと土足のまま家の中に入り、ベッドやソファーに靴を乗せてくつろぎ、絨毯は土埃をしっかりと吸い込んでいることは普通です。アジアでは靴を脱ぐ習慣がありましたが、急速に靴のまま生活するようになっています。コートや上着も着たままで家に入り、外と室内の区別はありません。日本人は室内着に着替え、外出着をきちんとしまう習慣もあります。また、湿気があるので、タンスやクロークなども風通しを良くして防虫剤などを入れます。カビや細菌を警戒する国民性がウイルス予防にも大きく影響していると思います。
・掃除やゴミを散らかさない習慣
日本人はきれい好きでよく拭き掃除をしますが、外国で拭き掃除をきちんとする国は少ないですね。掃除をする人は下層階級のような意識もあり、自分が出したゴミを片づけず、散らかしたままでいる人も多くおります。洗濯もあまりせずに何日も着続ける場合も多くあります。外国人差別や排除になってはいけないのですが、掃除や洗濯をして衛生的に過ごす人はいても、日本人のように皆が綺麗にしている国は珍しいと思います。東京オリンピックでも、その点が世界各国から来た人々に驚かれました。綺麗に装うということと衛生的ということは異なっています。
・身体的接触が少ない
親しさをスキンシップで表す国では、接触なしに人と交流することはできません。日本は握手でさえもあまりせず、人との接触が少ないのが特徴です。
・マスクをきちんとする
テレビなどでも分かりますが、外国では人々はマスクをすることを嫌がりほとんどしていません。人込みに出る時はやむを得ずマスクをしますが、例外のようです。布で口元を覆うだけだったり、通気性のある布マスクを用いたりすることも多いようです。
B. 社会的要因
・他人や周囲を配慮する社会習慣
外国では個人的にはきちんとしている人や組織はありますが、基本的には拘束されずに自由に暮らしたいと思う人が多くを占めており、感染予防の為に自主規制をすることは少ないようです。日本では、世間の評判や人の目を気にして感染をしないようにかなり注意するのですが、外国では感染を恐れた行動よりも感染に影響されないで生きることを選ぶようです。
・考え方や宗教が社会規範よりも優先する
アメリカでは共和党員はワクチン接種に否定的な人が多く、世界的には宗教者はワクチン接種を否定することが多くあります。日本ではそれを狂信的として否定的に捉えるようですが、それらの人々にとって命よりも信念や宗教の教えの方が大事であることを理解することも大事です。しかし、実際には感染防止が徹底できないことも事実です。
・生活様式を柔軟に変える
日本人は明治維新や第二次世界大戦後に驚くほど変わったように、引越しや仕事でも自らの生活や在り方を変えることが多い多様性を持っています。しかし、他国の人々は自らの風土・風習・価値観・生活習慣をあまり変えないものです。
C. 身体的要因
〔免疫力とは〕
免疫力とは、細菌やウイルスなどの病原体やがんから、体を守る防御能力のことです。病原体の感染から身体を守る仕組みが「免疫」です。目・鼻・喉・腸などの粘膜組織、そして身体の中でも免疫システムが24時間働き、これらの侵入を防いでいます。
ワクチンは、それ自体によってウイルスを攻撃するのではなく、その目的のウイルスに対して人間が持つ免疫力を個別的に発動させるために人為的に獲得させるものです。ですから、免疫力の弱い人には、ワクチンは効果がないのです。高齢者や基礎疾患のある人、そして肥満者に優先的にワクチンを接種するのは、この個別的免疫力を事前に向上させるためですが、免疫力がない人では、それでも免疫が発動しないことがあるのです。
薬を飲めば治るようになるというのも誤解で、薬もまた人間の持つ免疫力に依存しているのです。新型コロナウイルスの新しく開発された治療薬の効果が30%程というのは、やはりその限界を示しています。
身体を犠牲にして効率よく薬やワクチンで解決しようとすることは無理なのです。人間らしく、ゆとりとくつろぎをもって十分な栄養を摂って生きることが、感染予防や長生き、そして健康な生活に必要なのです。
〔免疫力が衰える原因〕
・栄養不足
タンパク質不足とビタミン・ミネラルの不足は、免疫細胞の不足となり、感染に対応できなくなります。病気や入院で筋肉が無くなるのは、筋肉を分解して生命維持に必要な免疫細胞を造り出すためであり、高齢者の免疫力が弱いのは栄養不足が原因です。
高齢者の栄養不足の大きな原因は、細胞が死んだときにそれを分解して再生する能力が衰えるからです。そして、消化吸収力も衰えるからです。高齢者は健康的な食生活に気を付けながらも、サプリメントで補給しなければ、身体に必要な栄養を確保できないのです。
・睡眠不足
睡眠は心身の疲労を回復させます。深い睡眠によって身体の修復や回復をもたらす成長ホルモンが多く分泌されます。睡眠に関わるホルモン(メラトニン)が十分に分泌されないと、身体に活性酸素が過剰に増加します。活性酸素が、がん細胞の増殖など悪い影響を引き起こすと考えられます。その他、睡眠不足はホルモンの分泌バランスを崩して体調を悪くさせます。短い睡眠で良い体質と誤解すると、身体を感染に弱い体質に劣化させてしまいます。
・ストレスの増加
ストレスも免疫力を低下させます。ストレスによって発生するコルチゾールは過剰になると脳の海馬を委縮させ、過剰な不安感に襲われるなど抑うつ状態につながるリスクを持っています。ネガティブな気分や過度なストレスによってうつ状態になると、病原体と戦う抗体の分泌が低くなるのです。